○誰もが共に自分らしく暮らす長岡京市障がい者基本条例
平成29年12月26日
条例第27号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 差別及び虐待の禁止(第7条・第8条)
第3章 相互理解の促進及び合理的配慮の提供(第9条―第17条)
第4章 差別解消のための取組(第18条―第20条)
第5章 雑則(第21条)
附則
誰もが、自分の人生に希望を持ち、あらゆる分野の活動に参加し、さまざまな選択肢の中から自分の意思で自分の生き方を決定する権利を持っています。
しかしながら、私たちをとりまく社会では、障がいの有無や障がいの種別、障がいのある人と障がいのない人が共に生きるしくみの不十分さが市民同士を分け隔て、お互いを知る機会は限られてきました。その結果、障がいについての無理解や誤解、お互いに声を掛け合うことへの遠慮が生まれ、また、障がいのある人の自分らしく生きる権利は社会的障壁に阻まれています。
私たち市民は、障がいと社会的障壁との関わりによって生じる不便・不利益を理解するとともに、障がいのある人に対する不当な取扱いを見過ごすことなく、社会的障壁を取り除いていく必要があります。
お互いの違いを認め合い、多様な個人が共に支え合って暮らす「共生」の社会は、誰もが理想とする社会のあり方です。このまちでの生活をより豊かにしつつ、未来へとつなげていくのは私たち市民にほかなりません。一人一人が日々の暮らしのなかでお互いを信頼し、お互いにとって何が必要かを考え、自分ができることを主体的に行うことが、豊かな共生社会につながると確信しています。
いま、一人一人の人格や尊厳を大切にし、市民の誰もが当たり前に安心して暮らし、希望を持って生きるために守るべきことがらを決めました。このまち、長岡京市が私たち市民のかけがえのないすみかであり続けることを目指して、ここに条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、障がいへの理解を深め、差別を解消すること並びに障がいの特性に応じた情報保障並びに多様なコミュニケーション手段の普及及び利用の促進を図るため、基本理念を定め、市の責務並びに市民等及び事業者の役割を明らかにするとともに、障がいのある人が地域社会を構成する一員として日常生活及び社会生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会を得るための施策を推進することにより、もって誰もが共に支え合い、安心して暮らせる共生のまちを実現することを目的とする。
(1) 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がいその他の心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活を営む上で相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障がいのある人にとって、日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(3) 自立 自らの人生を、第三者の支えを必要とするか否かにかかわらず自らの意思で選択できることをいう。
(4) 市民等 障がいの有無や年齢にかかわらず、市内に居住し、通勤し、通学し、又は市内で活動する全ての個人をいう。
(5) 事業者 市内において、営利であるか非営利であるかを問わず、事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいう。
(6) 差別 障がいを理由として障がいのない人には行わない不当な取扱いをすることにより障がいのある人の権利利益を侵害すること又は第10条の合理的配慮の提供を怠ることをいう。
(7) 虐待 障がいのある人に対して、暴行、暴言、侮辱、嫌がらせ、無視、放置、財産の侵奪、わいせつ行為、性的無配慮等を行うこと又は障がいのある人をしてこれらの行為をさせることをいう。
(8) 合理的配慮 障がいのある人が、障がいのない人と変わりなく日常生活及び社会生活を営むことができるよう、障がいのある人の特性に応じて社会的障壁を除去するに当たって、その実施者の過重な負担にならない範囲で必要かつ適度な変更及び調整を行うことをいう。
(9) コミュニケーション 日常生活又は社会生活を営む上で必要となる、人と人との間で行われる情報、知覚、感情、思考、意思の伝達及び交流をいう。
(10) コミュニケーション手段 手話、要約筆記等の文字の表示、点字、音訳、朗読、平易な表現、代筆、代読、絵図の提示その他日常生活又は社会生活を営む上で必要となるコミュニケーションを補助し、又は代替する手段、コミュニケーション支援用具等をいう。
(11) コミュニケーション支援従事者等 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者、朗読者及び盲ろう者向け通訳・介助者並びに知的障がいのある人、発達障がいのある人等へのコミュニケーションの補助を行う者をいう。
(12) 障がい者相談員 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第12条の3第3項に規定する身体障害者相談員又は知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第15条の2第3項に規定する知的障害者相談員をいう。
(基本理念)
第3条 共生のまちの実現は、障がいの有無にかかわらず、誰もが一人一人の違いを認め合い、その人格と個性を互いに尊重することを基本として行うものとする。
2 障がいは、障がいのある人の心身の機能の状態から直接的に生ずるものではなく、その状態と社会的障壁との相互作用によって生ずることから、社会的障壁をできる限り除去することを促進し、誰もが暮らしやすいまちを目指すものとする。
3 障がいのある人の自立及び社会参加の支援に関する施策の推進に当たっては、障がいの有無にかかわらず、誰もが主体的に取り組むものとし、市、市民等及び事業者が相互に連携し、協働して行うものとする。
4 情報保障及びコミュニケーションを行うに当たっては、独自の言語体系を有する手話、要約筆記、点訳又は音訳をはじめとする障がいの特性に応じて円滑にコミュニケーションを図る権利を最大限尊重し、多様なコミュニケーション手段の選択の機会の確保及び利用の機会の拡大が図られることを基本として行うものとする。
(1) 差別及び虐待をなくすための取組
(2) 障がいのある人の自立及び社会参加の支援に関する施策
(3) 障がいの特性に応じた情報保障並びにコミュニケーション手段の普及及び利用促進に関する施策
2 市は、前項の取組及び施策の実施に当たっては、次に掲げる事項を基本とする。
(1) 障がいについての理解を広め、その理解を定着させるための取組を行うこと。
(2) 日常生活及び社会生活を営む上で必要な情報の取得及びコミュニケーションについて、障がいの特性に応じた支援を行うこと。
(3) 適切な合理的配慮の提供について調査研究を行うとともに、率先して合理的配慮の提供を行い、市民等及び事業者の取組を支援するとともに、好事例を広める取組を行うこと。
(4) 公共施設の整備その他の障がいのある人に関わる施策を実施するに当たっては、障がいのある人及び関係者から広く意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めること。
(5) 市民等及び事業者と連携し、協働を図るとともに、障がいの有無にかかわらず、交流を図る機会及び自ら発信することができる機会を確保すること。
(6) コミュニケーション手段を必要とする障がいのある人、コミュニケーション支援従事者等、関係機関及び事業者と協力し、市民等にコミュニケーション手段を学ぶ機会を提供すること。
(市民等及び事業者の役割)
第5条 市民等及び事業者は、第3条に定める基本理念に基づき、障がいについての理解を深めるとともに、市の実施する取組及び施策に協力するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第6条 市は、第4条第1項に定める取組及び施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第2章 差別及び虐待の禁止
(差別の禁止)
第7条 何人も、差別をしてはならない。
(虐待の禁止)
第8条 何人も、虐待をしてはならない。
第3章 相互理解の促進及び合理的配慮の提供
(相互理解の促進)
第9条 市は、共生のまちの実現に向け、市民等及び事業者が障がい及び障がいのある人について理解を深めるため、交流を図る機会及び自ら発信することができる機会を確保するとともに、啓発その他必要な取組を行うものとする。
2 市民等及び事業者は、共生のまちの実現に向け、市民等が障がいの有無にかかわらず互いの理解を深めるため、交流を図る機会及び自ら発信することができる機会の確保に努めるものとする。
(合理的配慮の提供)
第10条 市は、その事務又は事業を行うに当たり、社会的障壁の除去の必要性をできる限り汲み取って、障がいのある人に対して合理的配慮の提供を行わなければならない。
2 事業者は、その事業を行うに当たり、社会的障壁の除去の必要性をできる限り汲み取って、障がいのある人に対して合理的配慮の提供を行うよう努めなければならない。
3 事業者は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)に基づき障がいのある人に対して合理的配慮の提供を行わなければならない。この場合において、社会的障壁の除去の必要性をできる限り汲み取るよう努めなければならない。
(情報保障及びコミュニケーションに関する合理的配慮)
第11条 市は、障がいのある人が必要な情報を取得し、利用し、又は自ら発信することができる機会の確保その他必要な取組を行うものとする。
2 市は、コミュニケーション手段が障がいのある人の年齢、障がいの種別又は状態等に応じてきわめて多様であることについて市民等及び事業者の理解を促進するとともに、障がいのある人が安心して日常生活及び社会生活を営むことができるよう、コミュニケーション支援従事者等と連携し、コミュニケーション手段の確保及び利用を促進するものとする。
3 市民等及び事業者は、コミュニケーション手段の普及及び利用の促進に協力するよう努めるとともに、必要に応じてコミュニケーション支援従事者等と連携し、障がいのある人がコミュニケーション手段を利用できるよう努めるものとする。
4 市は、関係機関と協力し、手話通訳、要約筆記その他聴覚障がいのある人(盲ろう者を含む。)のコミュニケーション手段を利用する場合に必要となるコミュニケーション支援従事者等の確保及び養成を行うものとする。
5 市は、関係機関と協力し、点訳、音訳、朗読、触手話、指点字その他視覚障がいのある人(盲ろう者を含む。)のコミュニケーション手段を利用する場合に必要となるコミュニケーション支援従事者等の確保及び養成を行うものとする。
6 市は、次に掲げるコミュニケーション手段の利用について支援を行うものとする。
(1) 知的障がい、精神障がい及び発達障がいの特性を踏まえた平易な表現による分かりやすい情報伝達及び絵図、写真、記号、サイン、ジェスチャー等によるもの
(2) 代用音声(喉頭摘出等により使用するものをいう。)及び重度の障がいのある人のための意思伝達装置(重度の両上下肢障がい及び音声又は言語機能障がいにより使用するものであって、まばたき等により操作するものをいう。)等によるもの
(3) 前2号に掲げるもののほか、市民等が日常生活又は社会生活を営む上で必要となるコミュニケーションを補助し、又は代替するもの
(保健及び医療に関する合理的配慮)
第12条 市は、福祉、保健、医療その他の関係機関と連携し、障がいのある人が安心して保健事業及び医療を受けられるよう体制を整備するものとする。
2 市は、障がいのある人が身近な医療機関で適切な医療を安心して受けられるよう、障がいの特性を理解して対応できる医療機関の充実及び医療機関相互の連携を推進するものとする。
(保育及び教育に関する合理的配慮)
第13条 市は、保育及び教育の実施に当たっては、全ての子どもの成長発達を目的とし、共に学び、育ち合うことを基本とする。
2 市は、障がいのある子どもに必要な保育及び療育の機会の確保に向け、必要な措置を講ずるものとする。
3 市は、障がいのある子どもが、その特性に応じて円滑に学習及び学校生活を行うことができるよう必要な措置を講ずるものとする。
4 市は、障がいのある子どもへの保育及び教育の実施に当たっては、全ての子どもの成長発達を目的とした交流を促進するものとする。
5 市は、子どもに対して、障がいについての正しい理解を促進するため、保育及び教育の現場において必要な措置を講ずるものとする。
6 市は、保護者、保育士及び教職員に対して、障がいについての正しい理解を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。
7 市は、障がいのある子どもに対して、切れ目なく支援を行うため、保育所等及び小学校、中学校、特別支援学校その他教育機関相互の連携を推進するものとする。
(生活環境に関する合理的配慮)
第14条 市は、障がいのある人に対して率先して合理的配慮の提供を行い、身近な生活の場における適切な合理的配慮について好事例を広める取組を行うものとする。
2 市は、道路の整備に当たっては、障がいのある人の通行及び公共交通機関の利用に支障がないよう努めるものとする。
3 市及び事業者は、障がいのある人の公共交通機関の利用を円滑にするため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
4 市は、障がいのある人の住宅を確保するよう努めるとともに、民間住宅の賃貸が円滑になるよう支援に努めるものとする。
(雇用及び就労に関する合理的配慮)
第15条 市は、障がいのある人の雇用及び就労の場を確保するための取組を推進するとともに、雇用及び就労の場において合理的配慮の提供が推進されるよう取り組むものとする。
2 事業者は、障がいのある人の雇用及び就労の場を確保するよう努めるとともに、雇用及び就労の場において合理的配慮の提供が推進されるよう努めるものとする。
3 市は、障がいのある人がその希望と適性に応じて、一般就労又は福祉的就労を行えるよう、行政、事業者、学校、福祉その他の関係機関との連携を図るものとする。
(文化芸術及びスポーツに関する合理的配慮)
第16条 市は、障がいのある人が文化芸術活動及びスポーツに取り組むことができるよう、参加する機会の確保、指導員の育成、情報の提供等必要な取組を行うものとする。
(防災及び防犯に関する合理的配慮)
第17条 市は、障がいのある人の災害時の安全を確保するため、必要な取組を行うものとする。
2 市は、障がいのある人が安心して生活を営めるよう、防犯対策について関係機関と連携し、必要な取組を行うものとする。
第4章 差別解消のための取組
(相談等)
第18条 障がいのある人及びその家族その他の障がいのある人の意思を代理する者並びに事業者は、市又は障がい者相談員に対し、差別に関する相談をすることができる。
2 市又は障がい者相談員は、前項の相談を受けたときは、必要に応じて次に掲げる対応をとるものとする。
(1) 関係者に対して、説明、助言、情報提供その他必要な支援を行うこと。
(2) 関係者間の調整を行うこと。
(3) 関係行政機関への通報その他の通知を行うこと。
4 市又は障がい者相談員は、第1項の相談を受けた場合において、その相談が特定相談に該当すると認められるときは、その相談及び対応の概要を京都府へ報告するものとする。
(助言又はあっせんの支援)
第19条 市は、障がいのある人又はその家族その他の障がいのある人の意思を代理する者から、京都府条例第6条又は第7条の規定に違反する取扱いを受けたと認められる相談を受けたときは、必要に応じて、京都府条例第14条第1項に規定する助言又はあっせんを行うよう求めるために必要な支援を行うものとする。ただし、その求めをすることが、明らかに当該障がいのある人の意に反すると認められるときは、この限りでない。
(調査研究及び報告)
第20条 市は、市又は障がい者相談員が受けた相談の事例について調査研究を行うとともに、その結果を障がい児者の福祉に関する事項を検討する機関に報告するものとする。
第5章 雑則
(委任)
第21条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成30年4月1日から施行する。
(検討)
2 市は、この条例の施行後3年を経過した場合において、この条例の施行の状況を勘案し、この条例の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。
附則(令和4年12月26日条例第29号)
この条例は、令和5年4月1日から施行する。
附則(令和6年3月29日条例第5号)
この条例は、令和6年4月1日から施行する。