○長岡京市男女共同参画推進条例
平成22年9月27日
条例第15号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 基本的施策(第8条―第15条)
第3章 男女共同参画を阻害する行為の禁止及び被害者支援(第16条―19条)
第4章 男女共同参画審議会(第20条)
第5章 雑則(第21条)
附則
長岡京市は、いにしえの都「長岡京」として栄えた時代から日本の歴史にたびたび登場し、悠久の歴史と豊富な地下水、西山のみどりによって人びとの暮らしが育まれてきました。
市制施行後は、京都府立婦人教育会館を誘致し、府内でいち早く長岡京市婦人行動計画を策定するなど、女性政策に先進的に取り組んできました。また、男女共同参画推進の拠点施設として女性交流支援センターを設置し、男女共同参画施策を進めてきました。
我が国では、昭和60年の女子差別撤廃条約の批准を契機とし、男女平等の実現に向けた取組が進められ、平成11年には男女共同参画社会の実現を21世紀の最重要課題と位置付けた男女共同参画社会基本法が制定されました。しかし、今なお、性に基づく固定的な役割分担意識や慣行が根強く残っており、特に女性の個性や能力が十分に発揮されていない状況があります。さらに、社会的な問題となったセクシュアル・ハラスメントやドメスティック・バイオレンスなどによる人権侵害など、男女共同参画社会の実現には多くの課題が残されています。
こうした現状の中で、私たちは男女共同参画社会の実現を目指すことを決意し、市と市民等の協働で、誰もがその個性と能力を十分に発揮できる真に豊かなまちづくりに取り組むため、この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、男女共同参画の推進に関する基本理念を定め、市と市民、事業者及び教育関係者(以下「市民等」といいます。)の責務を明らかにするとともに、市の施策の基本となる事項を定め、これを総合的かつ計画的に実施することにより、市民一人ひとりが人権を尊重され、その人らしくいきいきと暮らすことのできる男女共同参画社会を実現することを目的とします。
(1) 男女共同参画 すべての人が性別にかかわりなく個人として尊重され、自らの意思によって、社会のあらゆる分野で対等な構成員として活動し、その個性及び能力を十分に発揮する参画の機会が確保されることにより、平等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うことをいいます。
(2) 市民 市内に居住し、又は市内で活動するすべての個人をいいます。
(3) 事業者 市内において、営利であるか非営利であるかを問わず、事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいいます。
(4) 教育関係者 市内において、あらゆる教育及び保育に携わる個人及び法人その他の団体をいいます。
(5) 積極的格差是正措置 社会のあらゆる分野での活動における男女間の格差を是正するため、男女のいずれか一方に対し、活動に参画する機会を積極的に提供することをいいます。
(6) ジェンダー 生まれついての生物学的性別に対し、社会通念や慣習の中にある男性像又は女性像のような、社会や文化によって作り上げられた社会的性別をいいます。
(7) セクシュアル・ハラスメント 性的な言動により相手に不快感を与え、相手の就労環境その他の生活環境を害し、又は不利益を与えることをいいます。
(8) ドメスティック・バイオレンス 配偶者、恋人その他の親密な関係にある、又は親密な関係にあった者の間での、身体的、精神的、経済的又は性的な苦痛を与える暴力及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいいます。
(9) ワーク・ライフ・バランス 一人ひとりが、やりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、仕事と家庭や地域生活等との調和が保たれ、人生の各段階に応じて多様な生き方を選択及び実現できることをいいます。
(基本理念)
第3条 市及び市民等は、次に掲げる事項を基本理念として、男女共同参画を推進します。
(1) すべての人が、個人としての尊厳が平等に重んじられ、直接的であるか間接的であるかを問わず、性に基づく差別的取扱いを受けることなく、自立した個人として個性及び能力を十分に発揮する機会が均等に確保されること。
(2) ジェンダーによる固定的な役割分担に基づく制度及び慣行が改善され、すべての人が社会活動に制限を受けることなく参画し、多様な生き方が自由に選択できること。
(3) すべての人が、市の政策及び家庭、地域、職場、学校その他のあらゆる場における意思決定に、社会の対等な構成員として共同して参画する機会が確保されること。
(4) すべての人が、相互の協力及び社会の支援のもと、子育て、介護その他の家庭生活における活動及び職業生活その他の社会における活動に対等に参画でき、ワーク・ライフ・バランスが保たれること。
(5) 家庭、学校並びに社会のあらゆる教育及び保育の場において、個人の尊厳及び男女平等の意識を育む教育及び保育が行われること。
(6) すべての人が性と生殖についての理解を深めるとともに、特に女性の性と生殖に関する健康とそれを享受する権利が生涯にわたり保障されること。
(7) 経済活動の分野において、均等で健全な就業環境のもと個人の力が発揮できること。
(8) セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンスその他の男女共同参画を阻害する暴力的行為は、犯罪又は人権侵害であるとの認識のもと、その根絶を目指すこと。
(9) 男女の性別にとどまらず、性同一性障がいを有する人、先天的に身体上の性別が不明瞭である人その他のあらゆる人の人権についても配慮されること。
(10) 男女共同参画の推進は、密接な関係を有する国際社会の動向に留意し、国際的な協調のもとに行われること。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念にのっとり、男女共同参画の推進を主要な施策として位置付け、男女共同参画の推進に関する施策(積極的格差是正措置を含みます。以下同じ。)を総合的に策定し、実施しなければなりません。
2 市は、国及び他の地方公共団体と連携を図り、市民等と協働して、男女共同参画の推進に関する施策を効果的に実施しなければなりません。
3 市は、率先して男女共同参画の推進に取り組むとともに、事業者の模範となるよう努めなければなりません。
4 市は、男女共同参画の推進に関する施策の実施内容及び進捗状況について、市民にわかりやすい年次報告書を作成し、これを公表しなければなりません。
(市民の責務)
第5条 市民は、基本理念にのっとり、家庭、地域、職場、学校その他の社会のあらゆる分野に積極的に参画するとともに、男女共同参画の推進に努めなければなりません。
2 市民は、市、事業者及び教育関係者と協働して、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に取り組むよう努めなければなりません。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、雇用している、又は雇用しようとする人について、雇用上の均等な機会及び待遇を確保するとともに、ワーク・ライフ・バランスのとれる就労環境づくりに努めなければなりません。
2 事業者は、市、市民及び教育関係者と協働して、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に取り組むよう努めなければなりません。
(教育関係者の責務)
第7条 教育関係者は、男女共同参画社会の形成に果たす教育の重要性をかんがみ、基本理念にのっとり、男女共同参画の視点をもった教育及び保育に努めなければなりません。
2 教育関係者は、市、市民及び事業者と協働して、市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に取り組むよう努めなければなりません。
第2章 基本的施策
(男女共同参画計画)
第8条 市長は、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、男女共同参画の推進に関する基本的な計画(以下「男女共同参画計画」といいます。)を策定しなければなりません。
2 市長は、男女共同参画計画を策定し、又は変更するにあたっては、これを市民等に公表し、意見を聴くとともに、長岡京市男女共同参画審議会に諮問しなければなりません。
3 市長は、男女共同参画計画を策定し、又は変更したときは、速やかにこれを公表しなければなりません。
4 市長は、社会情勢の変化に対応し、男女共同参画の推進のため、必要に応じて男女共同参画計画の見直しを行わなければなりません。
(施策の推進体制の整備等)
第9条 市は、男女共同参画の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための推進体制を整備します。
2 市は、男女共同参画の推進に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、実施するにあたっては、基本理念をもとに男女共同参画の視点をもって、市の組織間の連携により取り組みます。
3 市は、男女共同参画の推進に関する施策を効果的に実施するため、随時、必要な情報収集及び調査研究を市民等と協働で行います。
4 市は、男女共同参画センター(長岡京市立総合交流センター設置条例(平成16年長岡京市条例第25号)の規定に基づき設置された施設をいいます。)及び多世代交流ふれあいセンター(長岡京市立多世代交流ふれあいセンター設置条例(平成21年長岡京市条例第27号)の規定に基づき設置された施設をいいます。)を男女共同参画の推進のための拠点施設として整備するとともに、交流、相談、情報提供、啓発等その他の必要な事業の充実を図ります。
(財政上の措置)
第10条 市は、男女共同参画計画に基づく施策を実施するため、必要な財政上の措置を講じます。
(積極的格差是正措置)
第11条 市は、家庭、地域、職場、学校その他の社会のあらゆる分野における活動において、男女の間に参画する機会の格差が生じている場合は、市民等と協力し、積極的に格差を是正するための措置を講じるよう努めます。
2 市は、審議会等の委員を委嘱し、又は任命する場合には、当該委員の男女のいずれか一方の委員の数が総数の10分の4未満とならないよう努めます。
(男女共同参画の理解を深めるための措置)
第12条 市は、すべての人が男女共同参画への関心及び理解を深められるよう、広報活動等を充実します。
2 市は、男女共同参画を推進する人材が育成されるよう、家庭、学校並びに社会のあらゆる教育及び保育の場において、教育及び学習の機会を充実します。
3 市は、提供される情報を男女共同参画の視点から正しく理解し、評価するための能力の向上を図ろうとする取組に対し、必要な施策を講じます。
4 市は、すべての人が、避妊、妊娠、出産、中絶、更年期その他の性と生殖に関する事項について、自らの意思が尊重された上で、生涯にわたり健康な生活ができるよう、情報提供その他の必要な支援を行います。
(市民等の活動に対する支援)
第13条 市は、市民等が行う男女共同参画推進活動を促進するため、市民等と協働するとともに、情報の提供、施設の提供、財政的支援その他の必要な支援及び協力を行います。
(家庭生活における活動とその他の活動との両立支援)
第14条 市は、家族を構成する人が互いの協力のもと、家事、育児、介護その他の家庭生活における活動と地域、職場、学校等における活動とを両立させるため、家族はもとより地域、職場、学校等で相互に協力しながら一体となって支え合えるよう、必要な支援を行います。
(雇用における男女共同参画の推進)
第15条 市は、事業者に対し、雇用における男女共同参画の推進に関して行う活動を支援するため、学習機会の提供、情報の提供、意識啓発その他の必要な措置を講じます。
2 市長は、必要があると認めるときは、事業者に対し男女共同参画の推進に関する取組の状況について報告を求めることができます。
第3章 男女共同参画を阻害する行為の禁止及び被害者支援
(性に基づく人権侵害の禁止)
第16条 すべての人は、家庭、地域、職場、学校その他のあらゆる分野において、直接的であるか間接的であるかを問わず、性に基づく差別的な扱い及び人権侵害を行ってはなりません。
2 すべての人は、セクシュアル・ハラスメント及びドメスティック・バイオレンスを行ってはなりません。
(情報及び表現に関する留意事項)
第17条 すべての人は、広く提供する情報において、次に掲げる表現を行わないよう努めなければなりません。
(1) 性に基づく固定的な役割分担意識を肯定し、助長し、又は連想させる表現
(2) 性に基づく暴力的行為を肯定し、助長し、又は連想させる表現
(3) 過度の性的な表現
(4) 性に基づく偏見を肯定し、又は助長する表現
(被害者支援)
第18条 市は、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス等あらゆる性に基づく人権侵害を防止する施策を講じるとともに、これらの被害を受けた者に対し、安全と安心を最優先して関係機関との連携を図り、相談及び各種制度の斡旋、自立に向けた情報提供等の必要な支援を行います。
(相談及び苦情の申出)
第19条 市民等は、性に基づく人権侵害の相談があるとき、又は市が実施する男女共同参画の推進に関する施策に対して苦情があるときは、市長に申し出ることができます。
2 市長は、前項の規定による相談及び苦情の申出について、必要に応じて、長岡京市男女共同参画審議会の意見を聴くとともに、国、府その他の関係機関及び関係団体と連携を図り、適切に処理します。
3 市長は、相談及び苦情の申出に係る処理制度への市民等の理解を深めるため、その普及啓発を行います。
第4章 男女共同参画審議会
(男女共同参画審議会)
第20条 男女共同参画を推進するため、市長の附属機関として、長岡京市男女共同参画審議会(以下「審議会」といいます。)を置きます。
3 審議会は、市長が委嘱する委員15人以内をもって組織します。
4 委員の任期は、2年とし、再任されることを妨げません。ただし、委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とします。
5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定めます。
第5章 雑則
(委任)
第21条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。
附則
(長岡京市特別職非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 長岡京市特別職非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和39年長岡京市条例第15号)の一部を次のように改正します。
〔次のよう〕略
附則(平成31年3月29日条例第2号)
この条例は、平成31年4月1日から施行する。