市長と語る“対話のわ” 令和3年7月31日(土曜日)
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令和3年7月31日(土曜日)NPO法人さらんネット

日時
令和3年7月31日(土曜日)午後3時30分から

場所
西院富士ビル 7階 会議室

テーマ
これからの長岡京市について

参加者
8名

対話録(要旨)
<市長>
本日は長岡京市の紹介や、現状をお伝えできればと考えています。

<<<長岡京市の概要>>>
人口約8万人(現在も微増傾向)、面積20㎢にも満たない小さなまちです。さらに市域の約4割が山なので、人口が密集しています。
◆特長(1)―大都市圏までの利便性がよいまち
JRと阪急の2wayアクセスで、京都まで12分、大阪まで30分。
さらに阪急西山天王山駅も。公共用地である京都縦貫道の真下に建設されている、全国的に見ても珍しい例です。そのため、用地代がかかっておらず、コストを抑えて建設することに成功しました。駅を出てエレベータで上がれば高速バス停留所もあります。
◆特長(2)―歴史あるまち
二度にわたり都が置かれた地。518年に継体天皇によって「弟国宮」が、784年には「長岡京」が置かれました。
来年には市制50周年を迎えます。
歴史あるまちでありながら、JR付近の東部地域には大企業の工場が軒を連ねています。歴史と産業のバランスがとれたまちといえます。

<<<長岡京市の名所>>>
◆長岡天満宮
キリシマツツジが有名で、4月末~5月頭にかけて見頃を迎えます。
そのほかにも、梅や桜、紅葉の名所でもあります。長岡京市を象徴するスポット。
◆乙訓寺
ボタンが有名。春には長岡天満宮のキリシマツツジと並んで見に来られる方が多いです。
◆光明寺
紅葉の時期にはたくさんの方が訪れます。
◆柳谷観音楊谷寺
最近来訪者の多いスポット。毎年6月初旬~7月上旬にかけて、境内にアジサイが咲き誇ります。手水に季節の花々を浮かべた「花手水」が「インスタ映え」すると若い女性を中心に人気を集めています。
◆西代里山公園
約2haの大きな公園。京都縦貫道西山トンネルを掘った際掻き出した土を使い、公園として整備しました。
◆サントリー<天然水のビール工場>京都
現在はコロナで中止していますが、ビールが試飲できる工場見学が人気です。
◆たけのこ
シーズンは限られているものの、長岡京市の名産品です。

<<<長岡京市のまちのすがた>>>
◆長岡京市の人口推移の特徴
(1)ある時期に人口が急増
1960年:約1万5千人→1970年:約5万1千人 と、わずか10年で人口が3倍に急増。
(2)生産年齢人口の減少…全国的にみられる傾向
平成7年から平成27年の20年間で、総人口は8万人弱を維持しながらも、うち生産年齢人口が1万人減っている。インパクトのある数字であり、危機感を持っています。
(3)「少子」高齢化時代といわれるが…?
本市でも間違いなく高齢化は進んでいるのに、子どもの数はあまり減っていない。それはなぜか?
平成17~27年の10年間で、30~40歳代の子育て世代層が転入超過。それに伴い、子どもの数も増加したことがひとつの要因です。出生数は減っているものの、一学年約700~800人の状態がコンスタントに続いています。
「出生数を増やす×転入をさらに増やす」ことにより、なんとか人口8万人を維持していきたいと考えています。
子育て世代層に住むためのまちとして選んでいただけるような施策に今後も取り組んでまいります。
◆公共施設の建設時期
先述のとおり、1960年から1970年の10年間で人口が3倍以上に急増しました。当時の一番の課題は「学校の確保」であり、毎年のように建校されました。
◎小学校:元々あった長法寺小学校、神足小学校だけでは間に合わなくなり、三小~十小を建校。
◎中学校:元々長岡中しかなかったが二中~四中を建校。
学校建校がひと段落したのち、文化施設の整備に移りました。現在、一気に作った施設を一気に建替えする時期が来ています。いまの市政の大きな課題のひとつであります。

<<<3つの戦略目標>>>
(1)定住促進
長岡京市は「暮らすため」のまち。8万市民を維持するための様々な施策を講じてまいります。
(2)交流拡大
たとえ8万市民が維持できても、高齢化が進めば経済は落ち込んでいきます。市外から観光、働きに来てくれる方を増やし、市内で使っていただけるお金を増やすことを目標にしています。
(3)新陳代謝
先述のとおり、施設やインフラも老朽化しているため、まちの新陳代謝が必要です。次の世代にしっかりとした都市基盤を残していきます。
<1.定住促進>…「かしこ暮らしっく」を合言葉にしたシティプロモーション
利便性の高いまちで「かしこく」、より豊かで「くらしっく」(=より優越をした)な暮らし を送ることのできる本市の魅力を表現した合言葉。
SNS等を用いて、若い世代向けにおしゃれなスポット等の情報発信も行っています。
<2.交流拡大>
◆観光
コロナ禍でアクションを取りにくいのが実情。
しかし、2020年大河ドラマ「麒麟がくる」放映を契機に、勝竜寺城公園をはじめゆかりの地が注目を浴びています。
◎恵解山古墳
山崎合戦の時に明智光秀が本陣を構えたのではないかと考えられている場所。
◎古今伝授の間
元々、京にあり、長岡天満宮に移されたが、現在は熊本市の水前寺公園内に移築をされています。細川藤孝が古今和歌集の奥義を授けた場。
◎ガラシャ祭
毎年11月第2日曜日に開催していますが、令和2年、令和3年とコロナで中止となりました。代替事業として、国際日本文化研究センターの皆さんとのシンポジウムや、「麒麟がくる」時代考証の小和田先生の講演をオンラインで配信しました。小和田先生の配信だけで10万以上のアクセスをいただくなど好評をいただいています。
奈良大学城郭研究者の千田先生の勝龍寺城の解説も配信。都市部の城郭跡は城址という碑だけ建っていることが多いが、城そのものではなくとも、当時の石垣や土塁などが現在も残っていることは全国を見てもなかなかないようです。
◎勝龍寺城築城450年祭
コロナ禍で開催が難しい面もあるが、歴史講演会などを行っていきたいと考えています。
◎乙訓古墳群
古墳「群」として史跡指定されているのは全国的にも珍しい例です。
京都市・西京区から向日市、長岡京市、大山崎町にいたる西山沿いに古墳が多く存在し、現在13の古墳が国の史跡指定されています。なぜこれほど古墳があるのか?と専門の先生にお伺いしたところ、この時代の政治の中心は大和(奈良)で、交易の中心は日本海側の丹後、舞鶴あたり。大和と舞鶴をつなぐ要所・東西の交通路の結節点が、まさにここ乙訓の地だったため、乙訓を治める豪族が多かったのだろうとのことです。
◆国登録有形文化財「中野家住宅」
中野種一郎氏の生家。市に寄贈いただいたのち、障がい者の暮らしをサポートする団体「暮らしランプ」によって、新たなグルメスポット「なかの邸」として利活用いただいています。障がいをもつ方の就労は一般的には日中が多いですが、夜間の飲食店という新しい職域にも挑戦されています。
様々な資源を使って交流の拡大を進めていきたいと考えています。
<3.新陳代謝>
◆新庁舎等建設事業
仮庁舎は建設せず二段階に分けて整備するため、6年の期間を要します。アゼリア通り沿い5階建ての1期庁舎を、その後方に8階建ての2期庁舎を建設予定です。旧庁舎前駐車場に1期庁舎を建てる→引っ越し→現存の庁舎を一部潰す→そこに2期庁舎を建てる→最後残ったところを潰して駐車場にします。
新庁舎には、別の場所にある産業文化会館、保健センターなど、古くなってきた公共施設を取り込みます。さらに歴史資料展示をできる場も設ける予定です。

<<<対話(質問・意見)>>>
<参加者>
阪急長岡天神駅周辺整備の進捗状況について教えてください。
<市長>
JR長岡京駅の再開発→京都縦貫道→西山天王山駅整備と大きな事業が続き、ようやく阪急長岡天神駅前周辺整備に取り掛かることができます。
連続立体交差に取り組むべく、周辺の皆様との調整を始めており、基本計画まで出来上がりました。
ただ、鉄道をあげるという事業は市ではなく、京都府でないとできません。
府に対して働きかけをしつつ、周辺の皆様ともまちづくりを共有しながら進めることが求められています。
残された大きな使命だと感じています。
<参加者>
長岡京市の農業の実態についてお聞きします。私の活動している地域では休耕田が増えてきており危機感を覚えていますが、長岡京市はいかがですか?
<市長>
長岡京市でも耕作放棄地が出てきています。もうひとつの問題は放置竹林です。竹は繁殖力が強く、放置され生い茂ると手がつけられず、土砂災害の原因にもなりえます。市域の4割を占める美しい西山を放置竹林等から守ろうと、平成17年に西山森林整備推進協議会が設立されました。先述のサントリー<天然水のビール工場>京都にも一員としてご協力いただいています。熱心な取り組みにより保全が進みつつあります。
次に、農家数の減少についてです。農地の維持と、人口8万人規模を維持するための宅地開発とのバランスが難しいというのが正直なところです。現在は、農家さんを下支えするため、地産地消を進める取組、たとえば学校給食への農作物の提供などを行っています。
<参加者>
景観保全には農地の維持も必要だと考えます。農家を増やすことは難しくとも、現状維持は必須です。生産性や、魅力的な収入など、農業に対する良いイメージがなければ継ぐ方も減少してしまいます。農作物のブランド化も農業のイメージ向上の一助になると考えますがいかがですか?
<市長>
おっしゃるとおりです。長岡京市のブランドで言いますと、京野菜として「京たけのこ」がありますね。大きな収入源になっています。もうひとつは、冬から春にかけて旬を迎える「花菜」があります。ただ仕入先が料亭などの飲食店が多いので、コロナ禍で少し苦戦されています。さらに、なすも特産品としてあげられます。
<参加者>
長岡京市の認知度は全国的にどの程度なのでしょうか?
<市長>
近畿圏では認知度は高いと考えています。阪急長岡天神駅が特急の停車駅であったり、住みここちランキングでもトップテンに入っていることから、京都府内ではもちろん、滋賀県、大阪府の方にも名前は知っていただいています。しかし、訪れたことはないという方が多数です。そこから少しでも足を運んでいただけるよう、ガラシャ祭等様々な催しを行っています。
<参加者>
長岡京市には温泉、ホテル、旅館等がありません。これらの充実については検討していますか?
<市長>
現在、市内には宿泊施設が2か所あります。やはり、観光と宿泊がセットでないと市内消費額はなかなかのびません。一時期は、インバウンドが増加したことから様々なホテル会社と協議を重ねていましたが、京都市内のホテルの飽和状態や新型コロナウイルス感染拡大状況から、宿泊施設の充実に向けた検討は難しいのが現状です。
<参加者>
私は乙訓の景観・地域資源の保全の取組を行っています。京都市と乙訓二市一町は、より連携して観光や環境保全に取り組んでいけるのではないでしょうか?
<市長>
まさにその通りです。長岡京市内に限定してしまうと半日で観光できてしまいます。せっかく足を運んでいただくのだから様々なものを観光していただきたいと思っています。例えばお寺なら、善峯寺から光明寺、また、ご承知のとおり、古墳群も京都市から西山一帯で存在しています。京都府が「竹の里 乙訓」を推進されているように、一帯を巡っていただけるルートを示すことが重要と考えます。そのためには、二次交通を充実させることが課題です。シェアサイクル等の取組で解消しようとしています。
<参加者>
先ほどの鉄道立体高架事業の中で、京都府と長岡京市の関係性についてお聞きします。京都府へは「お願いする」立場なのでしょうか?
<市長>
主体は京都府なので、市が要望するという形にはなります。技術面については京都府と長岡京市と阪急とで勉強会を設立し、ともに検討を進めています。
長岡京市の連続立体交差だけを行って踏切を解消しようとするのは、非常に局所的な利益しか生まれません。
長岡天神駅は特急の停車駅でありながら、未だに周辺には田んぼが見られます。先述のとおり他の事業が優先され土地区画整理が進んでいなかったことに起因します。来るべき再開発のため田んぼの形で保有してくださっていた近隣の皆様とも、これからのまちづくりについて協議を図ってまいります。あるいは企業の集積をはかるにも良い場所。まちづくりの絵を描いていけば、また、仮に企業の誘致ができれば、長岡京市だけではなく、京都府全体のプラスに繋がります。
上下関係ではなく、こういう絵を市から府にお示しすることが大事になってきます。
<参加者>
つまり、いかにwin-winのプランを提案できるか、ということですね。
<市長>
まさにその通りです。
<参加者>
建設行政や保健行政について。例えば亀岡市であれば、建設行政や保健行政は京都府の管轄ですが、長岡京市はいかがですか?
<市長>
亀岡市と同じく本市も独自では持っておらず、保健行政は京都府の乙訓保健所があり、建設行政も京都府の土木事務所となります。
<参加者>
奈良から京都に都が遷る前に、10年間長岡京に都が置かれました。長岡京市が選ばれたのは「天災が少ないから」と昔学校で教わりましたが、実際はどうなのでしょうか?
<市長>
過去を遡ると、桂川の氾濫が頻発しているので、その説の真偽は定かではありません。ただ、市民の中にはその認識を持たれている方が一定数おられて、災害が起こらないから大丈夫だとおっしゃる方もおられます。しかし、今の時代どこで災害が起こるかわからないので、十分に注意していただきたいと思います。
<参加者>
竹林について。1か月前くらいにテレビ番組で竹が120年ぶりに枯れだしており、それが全国的に起こっていると知りました。長岡京市でも起こっているんでしょうか?
<市長>
本市でも起こりはじめています。ハチクという竹で、その開花というのが120年に1回といわれており、少しずつみられ始めています。6月議会でもご質問いただいたところで、先月くらいに現場を見てきました。開花というべきか、花状のものが咲いたら最後、枯れきってしまう現象です。
<参加者>
それは広がっているのですか?
<市長>
一部が開花して枯れている状態です。緑の中に少し茶色いところがあるという感じです。
<参加者>
対策はないのでしょうか?
<市長>
花が咲くのは自然現象なので、対策法は解明されていないと聞いています。無理に開花を止めた際の影響も考えなければなりません。もうひとつ、テングス病による竹枯れが起きることもあります。これについては対策を図っていきます。
<参加者>
全国的に所有者不明の放置山林が多数あると聞きます。また、指導しようにも所有者がわからないので行政も手を打てないようです。京都市では、放置山林の所有者探しを行政書士会に委託しているようですが、長岡京市の放置山林の状況を聞かせてください。
<市長>
所有者不明の土地は全国でも大きな問題となっているため、法務局等が調査調整をする動きが出始めています。長岡京市でも山側にいくと所有者不明、実際の登記の境界の明示が全然できていないというのはたくさんあります。例えば先ほどご紹介した楊谷寺へ上がる道。非常に狭いので少しずつ拡幅をしていきたいのですが、土地を買おうと思い調査すると、まず所有権移転登記がされていないことがしばしばあります。また、子孫を登記から調べていくと所有者が120人おられ、その方々全員の判子をいただけないと土地が買えないなど、苦心しています。街中は資産価値があるため、きちんと登記移転していただけるが、山側は放置されてしまう傾向にあります。
<参加者>
コロナで今までの常識が変わりつつあります。勤務体制が変わり、会社に通勤することも減りました。市民が魅力に感じる事柄も変わりました。人口減少のこの時代、半分都会で半分田舎の長岡京市の魅力を再アピールするチャンスなのではないかと考えます。
<市長>
おっしゃる通り、コロナ禍のいま、働くことばかりでなく暮らしに焦点があたっています。暮らしやすさでは長岡京市は負けていないと自負しています。人口8万人を維持するため、この魅力をどうアピールしていくのか、検討を重ねていきたいです。
<参加者>
京都はスポーツ施設が乏しいと感じます。一流スポーツ選手の姿を見て子供たちは育ちます。長岡京市にも公式試合ができるようなスポーツ施設を作ったら自然に知名度も上がると考えます。
<市長>
京都府下のスポーツ施設が貧弱というのは、かねてから問題視されてきました。平成30年には亀岡市に念願のスタジアムが完成。長岡京市には誘致できる土地が残念ながらそれほど残っていないのが現状です。ただ、長岡京市はバドミントンのまち。国体のときにバドミントンを開催してから、小学生のバドミントンの大会、「若葉カップ」を30年以上開催しています。西山公園体育館がバドミントンの甲子園のようになっています。今回のオリンピック選手の中にも、若葉カップ出場経験者が数名いらっしゃいます。全国的な知名度向上は今後も取り組んでまいります。