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平成30年度総合教育会議会議録

  • ID:8448

日時

平成30年11月21日(水曜日)午後4時30分から午後5時20分まで

場所

長岡京市役所 第一委員会室

出席者

中小路市長、山本教育長、藤原教育委員、福澤教育委員

京樂教育委員、大下教育委員

事務局

〔教育部〕

教育部長、文化・スポ-ツ振興室長、同室担当主幹   

教育総務課長、教育部次長兼学校教育課長                 

学校教育課主幹、総括指導主事、生涯学習課長          

同課主幹、中央公民館長、図書館長、教育支援センター所長                 

北開田児童館長、教育総務課課長補佐                                                                  

〔総合政策部〕

総合政策部長、総合計画推進課長

傍聴者

なし

議事

市長あいさつ

(市長)

総合教育会議は、平成27年の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正に伴い、新たに設置された。市長と教育委員会が様々な議論を重ね、ベクトルを合わせて教育の推進を図ろうという趣旨であり、これまで給食をめぐる諸課題、教員の働き方改革、教育大綱などをテーマに議論してきた。

今日は学校のICT環境をテーマとする。本市の子どもたちをどう育てていくのか、忌憚のない意見をいただきたい。

教育長あいさつ

(教育長)

本日の議題は「これからの学校ICT環境について」。いまや、あらゆるモノがインターネットとつながり始めており、今の子ども達が生きる未来の社会では、どんな職業に就こうともICTと無関係に生きていくことはできない。ICTを学校現場でどのように活用していくのか、本日の意見交換を市長の取り組みに参考にしていただきたい。


これからの学校ICT環境について

(市長)

本市の教育では、これまでの積み重ねで学力について大きな結果を残してきた。

本市の学校教育の特色の一つは、読書活動。さまざまな取り組みを行い、ふるさと納税を活用した学校図書の充実もあり、結果として、学力のベースにもつながっていると思う。

もう一つの特色は、国際理解教育。姉妹都市であるアーリントンとの短期交換留学事業、英語検定の公費負担実施等、こちらもある程度学力に結果を残す事業ができたと思っている。これから始まる小学校での英語必修化に向けて、教員の手配についても他市と比べて充実した内容になっている。

これからの子どもたちの育ちを考えながら世界を見回すと、ICTに慣れ親しみ、技能を身に着けることは必須条件になりつつあると感じている。そういう目線で今の長岡京市の学校を見たとき、単純に比較するべきものではないが、先駆的な現場と比べると少し後れをとっているように思う。

これまで、中学校給食への投資をしてきた。また、学校施設の老朽化への対応はこれからもしていかねばならないが、本市の特色である読書活動や国際理解教育に加えて、ICTに慣れ親しみ、使いこなせる子どもたちを育てていくことが新たな展開として必要ではないか、という思いで本日のテーマを設定した。

今日出席している皆さんそれぞれの現場においても、ICTはもはや切っても切れない世界になっているだろうと思う。日常の経験を踏まえ、どういうことが必要か意見を交換し、方針が共有できるのであれば、次年度以降、環境の充実に向けて一歩踏み出していきたい。

その前提として、本市の現状を共有認識するために事務局からの説明を求める。

(事務局)

第4次産業革命とも呼ばれる今、これまでICTとは縁がなかった産業でICT化が進み、将来何が起きるのか、先の予測がむずかしく、加えて、今の子どもたちの世代は「人生100年時代」に突入するなど、激動の時代を生きていかねばならない。

このような時代を生きていくために必要な力として、よく教育現場では「生きる力」や「21世紀型スキル」といったキーワードが挙げられるが、根底にあるのは、「答えのない問題に対してどう対応していくか」ということを見据えていることである。

情報活用能力も、そのために必要なスキルのひとつであり、もはやICTの利用なくして、激動の時代を生きていくことは難しい。実際に、子どもたちが生きる未来の社会では、たとえどんな職業に就こうとも、どんな人生を歩もうとも、もはやICTと無関係では生きていくことはできない。

例えば、東京大学法学部推薦入試のグループディスカッション課題では難民対策をテーマに、「論理的思考力、発想力、コミュニケーション能力、チームで作業する能力」などを審査する、とある。少なくとも東京大学法学部はこのような能力を必要としていると推察できる。

文部科学省では、新学習指導要領において、育成すべき能力・資質の3つの柱を掲げている。

1.生きて働く「知識・技能」の習得

例えば784年に長岡京遷都、という事実的な知識だけでなく、なぜその出来事は起こったのか、どういう影響を与えたのかを追求し、社会における様々な場面で活用できる知識として身に着けていくことが重要となる。

2.未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力」の育成

未知なことに対応し、切り拓いていくために、理解していることやできることをどのように使うか。

3.学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」の涵養

主体的に学びに向かう、自己の感情や行動を統制する能力、自己の思考のプロセス等を客観的にとらえる力など、いわゆる「メタ認知」に関する力と、多様性を尊重する態度、協働する力、リーダーシップ、チームワーク、感性、優しさ、思いやりなどの人間性に関するものである。

まさに東京大学の問題で問われている力である。

これらの能力・資質を育成するのに、ICT環境の果たす役割はどういうものか。

ICTの特性・強みを改めて確認すると次のとおりである。

1.多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめ表現することなどができ、カスタマイズが容易である。

2.時間や空間を問わずに、音声・画像・データ等の蓄積・送受信ができる。

3.距離に関わりなく相互に情報の発信・受信ができるという双方向性を有する。

例えば、平和学習で沖縄戦の語り部の声を聞いたり、他校の生徒児童との交流ができたりする。

「知識・技能の習得」のためには大型投影機や動画コンテンツが有効だし、フラッシュ型教材で反復学習することで知識の定着につなげることができる。また、1人1台端末があれば、進捗に合わせ、児童別に内容を変えた出題をすることもできる。

「思考力・判断力・表現力等の育成」のためには、意見を持ち寄って比較しながら話し合うのに便利だし、プレゼンテーションも身近になる。

文部科学省は、新学習指導要領実施に向け、その整備環境をステージ1から4に表している。

・ステージ1(電子黒板+各教室PC1台)

・ステージ2(電子黒板+グループ1台可動式PC)

・ステージ3(電子黒板+授業展開に応じて必要な時に1人1台可動式PC+無線LAN)

・ステージ4(電子黒板+1人1台可動式PC+無線LAN)

 

近未来の授業として、ステージ3のタブレット端末を活用した授業実践を紹介する。

国語の授業で、グラフを読み解き、データに対する意見文を作成する、というもの。グラフは指示された通り自分の端末に読み込み、100字程度の手書きメモにまとめた後、内容について話し合う。大型モニターで意見文の書き方を振り返り、ワープロソフトを用いて400字の意見文を作成する。

これをすべて手書きで行う場合、400字の意見文を作成するには45分の授業すべての時間が必要となり、中には書ききれない児童もいる。ワープロソフトを使えば15分程度で作成することができるので、ブラッシュアップの時間もとることができる。1人1台の端末があれば、こういうことが可能になる。

本市でも、教員側のICTはある程度整備できているが、今後は子どもたちが学ぶためのICTが必要ではないかと思っている。

文部科学省の目標ではステージ3を目指しているが、本市はほとんどの学校がステージ1、一部でステージ2という状況である。

(市長)

ICTは、今までを否定するものではない。バーチャルでなく、リアルで感じるものは必要。あくまでも今までの積み上げの上にICTを使うことで、授業が充実したり、子どもたちが自然に扱えるスキルを身に着けたりすることにつながるのではと思っている。

(委員)

子どもが大学に入学する時、パソコンがないと履修登録ができなかった。子どもの世代は画面を指で操作することはできてもタイピングができないことに気づき、その時になって後悔した。学校で経験はしているが身には着いていないので、小学生、中学生の頃からキーボードに慣れ親しむ必要があると感じた。

また、学習に支援が必要な子どもたちにとっては、板書することがとても負担になる。視力の低い子がめがねをかけるように、タブレットを使うことで学習支援につながる場合もある。京都府では、来年度から教職員向けにもインターネットを活用した研修が始まる。今後は無線LANの整備も必要である。

ここまで利点を述べたが、我々が受けてきた教育環境では、五感を使って勉強し、記憶していくことが大事とされてきた。字を書く、物を聞くといったアナログな部分を残しつつ、ICTで効率よく授業できるような環境が作れたらと感じる。

(委員)

今年の2月、乙訓教育委員会連合会の研修でICT教育モデル校である大阪市立本田小学校を訪問した。3年生以上の各学年にタブレットが40台配備されている。授業では、生徒が意見をタブレットに手で書き込み、それをまとめて一画面に映し出す。意見を色分けし、児童たちの意見が共有化されていて、非常にいいなと感心した。他にも音楽を図形で表現する、という授業もあった。ICTでどのように進めていくかが大切であると思う。

個人的には、日本はIT先進国ではないと思う。本田小学校が参考にしたのはシンガポールだという。本市はアーリントンとの交流がある。生徒だけでなく、教員同士も交流することで、参考になる話もあるのではないか。

(委員)

自分自身の学生時代と比べると、パソコンが普及して便利になった。しかし、便利だということと、ICTだからこそできることを区別する必要がある。

ICTで失われる能力もある。漢字が書けず、変換ミスに気が付かない学生も多い。辞書をひかなくなり、弊害が出てきていると感じる。

データベース検索する際、教員に比べ学生はヒットする件数が少ない。検索値に何を入れるかによって違うわけだが、学生はやみくもに入力している。経験だけでなく、教育によって能力を鍛えねばならない。

また、データの信頼をどう担保するか。学生にウィキペディアは使用不可と伝えるが、似たようなものを使ってくるので、なぜそのデータを信頼できるのか、と聞くと答えることができない。そういうことへの教育も必要である。

ハード面では、OSの更新の度に費用面も含め、対応が大変だと思う。

(委員)

大学ではもはやPCは切り離せない。論文や研究発表でもパワーポイントは必須なので、使える学生はアドバンテージがある。

小学校の授業では、例えば黒板で描けない立方体の断面の説明であるとか、地球の公転、日食などの説明をする時などに効果的だと思う。あくまでツールとして使う、ということをコントロールするのが教員なので、教員も使いこなせるよう努力が必要である。また、コピー&ペーストをするレポートも多いので、宿題型で課題を課すのは慎重にならねばならない。

自分自身も板書をノートにまとめる過程を繰り返すことで理解ができ、反復、記憶、経験に裏打ちされて学習能力が高まる、ということを経験してきた。これも重要だし、ICTをうまく使いこなすことが必要である。

(教育長)

ICTを使って何をするか。第一段階としては使い方を学ぶことだが、スマートフォンでもすべてのアプリを使っているわけではない。ICTをうまく使えるということと、ICTを使って何をしたいのかということを、教育の中で切り分けることが大事。

(市長)

1996年に大学を卒業して大学院に進んだが、卒業論文は原稿用紙対応のワードプロセッサで、修士論文はパソコンのワープロソフトで書いた。Windows95が発売され、インターネット接続はまだまだ低速であった時代である。あれから20年ほどたち、できることが格段に増えた。

話を総合すると、ICTの環境整備の必要性及び重要性については共有できたと思う。あくまで、ICTはツールであり、それを使いこなすスキルが必要である。

第一段階として、絶対に必要なレベルのスキルを身に着けること。

次に、それを使って何をするか。膨大なデータをまとめたり、他分野のものを統合・整理したりして、思考や考え方につなげていける使い方を学ぶことが、次の段階として必要かと思う。

また、便利になった反面、負の部分にも目を光らせねばならない。コピー&ペーストや、ネット情報を鵜呑みにしてしまう問題など、リスク管理も必要である。そこに配慮しながら、一定の環境整備を図っていきたい。

我々が子どものころにはできなかったことが、格段にできるようになった。ICTを使った授業展開によって、子どもの好奇心を大きく広げていくことが、何より重要ではないか。子どもの可能性を最大限に引き出すために、いろんなツールを駆使し、好奇心を広げていくことを目標にしながら、ICT環境の整備を進めていくべきかと感じた。

(教育長)

小学生の夢の一つにユーチューバーが挙がったり、eスポーツでは巨額の賞金を獲得できるとあって、韓国ではそれを教える若者が何千万と収入を得たりしている。職業になり得るとなると、その価値を認める必要があると思うが、一方で人間の大切な部分を破壊してしまう面もある。

(市長)

そういう懸念はつきまとうが、かといって懸念だけでは新たな可能性をつぶしてしまうので、そのバランスは常に考えねばならない。

韓国のICTの進み方は、日本の10年先、20年先をいっている。行政サービスがインターネット上でほぼ完結するという。人が一人亡くなると、日本は提出すべき書類が山ほどある。韓国では、一つボタンを押せばほぼ完結する。日本では個人情報漏えいの懸念等が大きく、なかなか進んでいない。個人情報を守ることは責務だが、では個人情報とは何か。それを守るとはどういうことか。その議論が日本では欠けているように思う。セキュリティの問題はあるが、そこばかり言うと、利便性が享受できない

また、技術は日進月歩であり、環境整備をしてもその時にはまた次のステージに入っていたりするので、大きな課題である。

本日の総合会議では、ICTをどう生かしていくか、リスク管理も含めて意見をいただきながら、本市の新しい特色として一歩ずつ一緒に環境整備を進めていきたい、ということを共有した。引き続きよろしくお願いしたい。

お問い合わせ

長岡京市 教育部 教育総務課 総務・施設整備担当
電話: 075-955-9532 ファクス: 075-951-8400
長岡京市 総合政策部 総合計画推進課 企画総務・行革担当
電話: 075-955-9502 ファクス: 075-951-5410