令和7年度 第1回長岡京市文化財保護審議会会議録
- ID:9021

日時と場所

日時
令和7年5月22日(木曜日)

場所
長岡京市立図書館 3階 大会議室

出席者

委員
井上会長、仁木委員、礪波委員、藤田委員、網委員、國定委員、井上委員、橋本委員、林委員

事務局
西村教育長、中島部長、辰巳課長、篠原課長補佐、橋本総括主査、大髙主査、松本主事、吉村主事

オブザーバー
中島埋蔵文化財センター事務局長

案件
1.令和6年度文化財保護事業の報告および令和7年度文化財保護事業の計画について

開会
・教育長あいさつ
・異動者あいさつ
・会議成立状況の確認
・委員10名のうち9名出席
・傍聴者の確認
・傍聴者なし

議事
(会長)
令和6年度文化財保護事業の報告および令和7年度文化財保護事業の計画について、事務局から説明をお願いする。
(事務局)
【令和6年度文化財保護事業の報告および令和7年度文化財保護事業の計画について説明】
(会長)
1つ目が令和6年度文化財保護事業の報告、2つ目が令和7年度の文化財保護事業の計画、3つ目が新庁舎歴史資料展示室の説明ということである。
まずは1つ目、令和6年度文化財保護事業の報告の部分について、ご質問も含めてご意見をいただければと思う。
(委員)
市内の遺跡発掘調査でとりわけ今後の展開が想定される、注目すべきようなものが発見された場合には、より具体的な説明がほしい。私の関心でいえば、歴史資料の詳細調査のなかで、岡本弥兵衛家旧蔵文書にも何らかの発見があれば、その成果を詳細でなくてよいので、説明いただきたい。
(事務局)
来年度以降の資料では、成果の一部は特記することとしたい。昨年度は1360次調査において、朱雀大路の遺構が一部発見されたのは非常に大きな成果だと捉えている。岡本弥兵衛家旧蔵文書の調査に関しては、神足村のいくつかある庄屋の家筋、岡本家についても3つほどに分かれており、今回の成果はこれらを相互に補完するもので、神足村の様相がより詳細にえがき出せるようになった。
加えて昨年度は、長岡天満宮に関する古文書が市場に流出していることが発見されたことが挙げられる。天満宮とともに内容を確認した上で、天満宮が購入された。当課としては、翻刻作業に取りかかっている最中であり、内容については、遷宮に関わるもので、その様子が具体的に記されている。詳細は今後、当審議会でも報告したい。
(会長)
時期としてはいつ頃のものか。
(事務局)
遷宮に関わる最も古く、詳細な記述は安永年間(1772~1781)あたりのものである。
(会長)
行事は神社にとって非常に重要なので、史料が天満宮に戻ったということは本来の居場所を得たということで、非常に好ましいことだと思っている。
考古資料の収蔵スペースについては、どの自治体にも通有する課題であり、もう少しお聞かせ願いたい。
(事務局)
現在、長岡京市内にある考古資料の収蔵スペースは、埋蔵文化財調査センターのほかに、市役所東側にある貸倉庫150平米程度、スポーツセンター内の倉庫200平米程度の3ヶ所である。しかし収蔵率は90パーセントを超えている状況で、整理もしているが5年もつか10年もつかという状況であり、市で対応を検討している最中である。
埋蔵文化財調査センターも建物自体の老朽化と増え続ける考古資料という二つの課題を抱えているため、機能移転を視野に入れている。具体的には、産業文化会館や保健センターなどが移転するなど、市役所の統合・再編のなかで、多世代交流ふれあいセンターこらさが保健センターに移転する。その空いたスペースに、埋蔵文化財調査センターを移転させるということを検討している。
(会長)
センターそのものを移転するという理解でよいか。
(事務局)
センターそのものの移転を検討している。
(会長)
考古資料は増えることはあっても減ることはないので、十分に考えてほしい。今、貸倉庫とスポーツセンターに収蔵しているというが、良い環境ではないだろうし、スペースには限りもあるので、いわゆるトリアージの必要もあるだろうが、どうぞ慎重に今後よろしくお願いしたい。他にご意見、ご要望、ご質問等はないか。
それでは2つ目、令和7年度の文化財保護事業の計画について、何かご質問やご意見等があればお願いしたい。
(委員)
佐藤家住宅の展示支援について、どういった内容か?
(事務局)
佐藤家住宅は長法寺に所在する、庄屋を務めた旧家で、建造物が国登録有形文化財に登録されている。歴史資料もたくさんお持ちで、所有者より「資料の展示をしたい」との相談を受け、ご家族で公開できるような方法や内容を提案するなどして支援を行っている。
(会長)
佐藤家住宅には今もお住まいなのか。
(事務局)
そうである。
(会長)
当然日常生活が行われているわけで、よろしくご支援、ご指導のほどお願いしたい。
(委員)
「長岡京市歴史文化めぐる。総合活用事業」の講演会のチラシについて。下賜された昭和大礼の建物についての内容で、乙訓寺客殿が取り上げられるが、これは「御所」ではなく、「御苑」の誤りではないか。京都御所の建物の話かなと思ってしまうと、来場者に誤解を招くのかなというふうに思うが、いかがか。
(事務局)
一般の方に広く、京都御苑と京都御所が区別されていないのが現状と思われるため、統一して「御所」と表記した次第である。
(会長)
私も京都育ちで、あのあたりで遊んでいた身であるが、御苑と呼ばれるとピンとこない。しかし施設としては別のものであり、所管の官庁も異なっているので、厳密に区別されては?少し補正なりお考えいただけるか?
(事務局)
ご指摘ありがたい。
(委員)
これと関連して、環境省が近年、建物のVRを作って公開されている。美術館や研究機関等をリンクさせるような形で今整理されているところなので、長岡京市もリンクしてもらって繋がるようにしてはどうかと思うが。
(事務局)
検討したい。
(委員)
史跡乙訓古墳群の公有化と整備・維持管理について、重点事業に位置付けられているが、具体的な計画を教えてほしい。
(事務局)
令和6年度、井ノ内稲荷塚古墳2000平米のうち477平米の公有化をおこなった。残りについても継続的な協議をしているが、地権者の状況もあり公有化が進んでいない状況にある。
稲荷塚古墳は公有化した段階で整備の話も出てくるかと考えている。
もう一つ、史跡乙訓古墳群のなかでも公有化できていない主なものが西山公園体育館横にある長法寺南原古墳約2万5000平米である。今現在、具体的な整備計画はないが、活用をテーマにサウンディング調査という形で民間事業者から、どういったことができるのかというような意見聴取をしている。こちらは長岡京市公園緑地課が所管する「みどりの基本計画」の改訂に併せて検討を進めている。活用の目途がある程度立った段階で、文化庁の補助金と絡めながら、整備の方向性を検討していくというような段取りである。
(委員)
長法寺南原古墳の整備活用、活用計画等は検討中で、今後、この計画等を絡めながら進めていく。これを当審議会でも検討するという理解でよいか。
(事務局)
お見込みの通りである。また維持管理という面では恵解山古墳公園や井ノ内車塚古墳には予算をつけて、前者では例えば植栽や日々の公園管理をおこなっている。
(会長)
3つ目、新庁舎歴史資料展示室について、ご意見等伺いたい。市民の目に直接触れる大切な場であるので、ご意見よろしくお願いする。
(委員)
一番奥の展示室2について、オープン以降はどのような形で運営する予定か。私が以前に関わった大山崎町歴史資料館の開設の経験からすると、常設展示は一度見ると再訪性が低くなってしまうため、企画展示を繰り返し行い、新鮮な情報を提供していくことが再訪性の向上に繋がると期待される。現時点ではどのような方向性をお持ちか。
(事務局)
再訪性には注視しているところである。展示に変化をもたらすためにも企画展は年2~3回行うことを考えている。具体的にどれぐらいの期間でどうするかといった具体的なことは決まっていないが、長岡京市の歴史文化の資源や文化財との兼ね合いを考えながら、今まさにその部分を議論しているところである。また開館日についても、恐らく条例で定める流れになると思うが、市役所の開庁日に加えて、土日も開館することを検討している。
(会長)
このイメージ案は、一種のビジターセンター的な役割を持たせる風に受け取っているが、人はどこに駐在するのか?
(事務局)
スペースの問題から、この場に人の駐在は考えていない。しかしながら、当課の執務室が7階に配置されるため、防犯カメラを設けたり、2階と連絡がとれるような管理体制は構築する予定である。
(会長)
ビジターセンターである以上は、市内の各地へ人をいざなう目的も当然あるわけで、口頭での説明を要する場面もあると思う。デジタル機器を用いながらやっていただきたい。
(委員)
市内にある神社仏閣など文化財に関わる施設との連携は必要である。来場者が展示室での情報発信を受けて、現地に行ってみたいと思うとき、そこが未公開であるというようなことになってしまうと、がっくりしてしまう。今後、市内にある文化財所有者と連携を密にしたなかで、ここで見たものは本物が見られるというような環境を作っていっていただきたい。
(会長)
真にその通りで、そのような点はきめ細かに、市民に対して我々がやらなければならないサービスだと思う。
(事務局)
我々も全ての文化財を展示室で展示することはできないというところを前提としている。所有者との連携のなかで、やはり現地に行っていただき、それを見ていただける環境を提供していきたい。これは現在、既に所有者と調整を進めさせていただいている。むしろここが最重要なことであると捉えている。
(委員)
アクセシビリティ対応について。展示室の来場者はさまざまな人が想定される。障がいを持つ方々への対応は考えているか。
(事務局)
いわゆるアクセシビリティ対応は、業者等を通じて色々と検討している状況である。狭い空間ではあるものの、車椅子が通れる動線を確保したり、映像を使うだけでなく、今年度は音声ガイドを作ろうというようなことも考えており、そういったものを補完し合いながら、整備を進めたい。
(会長)
100パーセントのサービス提供は難しくても目指すべきである。外部の見識も十分に借りながら、よろしくお願いしたい。
(委員)
展示室2の什器について。壁面ケースが1つ、覗きケースが2つ、行灯ケースが1つとのことだが、企画展の内容や資料によって、必要な什器は変わってくると思う。壁面以外の可動ケースは複数用意していて、どのような展示にも耐え得るように考えているのか。
(事務局)
今回のスタートアップの企画展のみを前提としたわけではなく、可能な限り、展示室2の大きさ、企画展のパターンを想定した中で、コストの面も考慮しながら検討しているのが現状である。
(委員)
いろいろと考えておられるとは思うが、予算措置上、追加で購入することは難しいように思われるため、様々なタイプの展示を前提に、可変性があるよう最初の段階からいろいろな用意しておくのがよいだろう。
(会長)
可動ケースの収納場所は想定しているのか。
(事務局)
7階に設ける歴史資料整理室での収納を想定している。
(委員)
乙訓寺について。現在、同寺庫裏の屋根がグリーンシートに覆われている状況であり修理が必要かと思われるが、文化財として補助が出るのか。
(事務局)
現況は認識しており、かつて乙訓寺よりご相談を受けていたが、年代など、文化財の補助事業の基準に該当せず、ご支援は難しい状況にある。
(委員)
歴史文化周遊ルートについて。京都一周トレイルは西山あたりで途切れており、乙訓地域にはない。道標を立てるなど、市民に歴史に触れていただく足掛かりとなればよい。
(事務局)
文化財と観光は密接な関係にある。我々も連携のためには双方、お互いの動きを捉えておく必要がある。商工観光課では京都西山をテーマとした発信をしているが、このような事業は長岡京市のみならず向日市や大山崎町を含めた連携が本来望ましい。
(会長)
文化財のありように関わる非常に重要なご指摘である。京都古文化保存協会では毎年春と秋に文化財の特別公開をしている。大変面白い試みで、成功もしているように認識している。長岡京市あるいは乙訓地域を含めて、こうした方向で進めていけば、文化財を今まで以上に市民に近しいものにできるかと思う。将来的にそのような事業ができればよいかと思う。
(委員)
観光との連携は市の文化財保存活用推進会議でも重要な案件として位置付けている。今後も活用といった事業を進めていただければ。
(委員)
メディアはぜひ活用していただきたい。講演会や街歩きなど楽しめるイベントも企画していただければ。
(会長)
メディアはぜひ活用してほしい。企画展の開催前日に、メディア向けの内覧会をおこなうなども考えられる。
(委員)
乙訓寺の庫裏について。堂内に安置される仏像などが指定文化財であれば、それを守っている建物も補助の対象になるのではないのか。
(事務局)
保存施設は補助対象である。しかし乙訓寺の庫裏は、補助対象とならない状況である。
(委員)
少しでも補助があると、所有者としてはたいへんありがたい。近日、琵琶湖疏水に関わる施設が国宝に答申されたが、長岡京市で文化財に指定されているのは、神社仏閣の建造物や仏像が多いが、他にもあるはずだ。例えばJR京都線の橋梁も対象になるのではないか。また、恵解山古墳公園ののぼり旗が破損しているので、少し綺麗にしていただければ、もっと良い風景になるのではないか。
(会長)
国の指定には年代で傾向があるが、本審議会が大切にしなければならないことは、市民にとってどれだけ大切なのか、あるいは愛着を持たれているかという視点である。どうぞよろしくお願いいたしたい。
(会長)
他になければ、令和6年度文化財保護事業の報告および令和7年度文化財保護事業の計画についてご了解いただいたとする。
(各委員)
【異議なし】

閉会
- 今後の審議会開催予定の確認