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中小路市長の雑感日記『多様性を感じる機会に~大阪関西万博開幕』

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4月25日 多様性を感じる機会に~大阪関西万博開幕

先日、西代里山公園・西山ホタルの家で開催された『これからの里山を考える―超学際的アプローチの試み』と題した講演会を拝聴した。

長岡京市里山再生市民フォーラムの主催で、西山森林整備推進協議会の会長としても大変お世話になっている徳地直子京都大学教授が上記のテーマで登壇された。

里山に人の手が入らなくなったことで生物の多様性を生み出し、多くの恩恵を生み出してきた数々の機能が失われつつある。そんな現状への危機感から、この間、専門分野を超えた学際的な研究がすすみ里山をめぐる様々なデータが蓄積されつつあるそうだ。今後、こうしたデータに基づきながら生態系の管理を社会としてどう行っていくか、すなわちシチズンサイエンスの実践が求められている。講演会ではそうした問題提起がなされた。

講演の中でとても面白く感じたのが、里山自体の多様性が高ければ高いほど、そのシステムの安定性が高くなるということが各種データから裏付けられたということだ。樹種や生息する生物の多様性こそが、里山から供給される財の生産性の面からも、ダメージに対する冗長性・リダンダンシーの面からも、非常に有効に機能するそうだ。

このことはまさに、組織にとっても社会のあり方にとっても示唆に富むのではないか。講演をお聴きしながらそんなことを考えた。


「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとした『EXPO2025 大阪関西万博』がいよいよ開幕した。

23日、私もEXPO KYOTO MEETINGの開催に合わせて会場を訪れた。

曇り空のということもあったのかもしれないが、報道されているほどの混雑を感じる場面もあまりなく(もちろん人気のパビリオンは行列があったのだが…)、快適に楽しみながら京都府や本市に関連する企業の出展されているブースやパビリオンを見学させていただくことができた。

限られた時間の中、とても広大な会場を駆け足で回ったのだが、何より感じたのは、世界はまだまだ知らないことで溢れていて、世界はとても豊かで多様だということ。いや、逆かもしれない。多様だからこそ豊かなのだろう。これが万国博覧会ゆえの醍醐味であり楽しみに違いない。

そんな中、平日ということもあったのだろう、会場内ではたくさんの子どもたちが楽しむ姿を見ることができた。

多様性を大切にする入り口は、「違い」や「異なり」を知って感じることだと思う。

そして、世界各国から人々が集う万博はそんな「違い」や「異なり」を身近に肌で感じることができる絶好の機会に違いない。

多様性の大切さを十分に体感した子どもたちが担う未来は、きっと強靭で持続可能なものになるはずだ。そう期待している。



大阪関西万博の大屋根リング前にて

7年度の雑感日記(ページリンク)

4月18日 自治体の思いを届けるために

16日に開催された京都府市長会の春季定例会において、会長の大役を拝命することとなった。

府内15市の市長で構成される京都府市長会。これまで会長職を務められた多くの先輩方の姿を後ろの方から頼もしく拝見してきた。その背中ははるか先にあるものとばかり思っていたのだが、いよいよ自分自身がその任を担うこととなる。

2年の任期の間、与えられた職責を、微力ながら誠心誠意、全力で務めていきたいと思う。


先行きの見通しにくい時代である。

国際情勢や世界経済の動向もさることながら、私たち自治体に大きな影響を及ぼす我が国の政治状況も混とんとしているのが実情だ。


昨秋以降、今年度予算の決定プロセスを客観的に見ていても、政権与党が衆院で過半数を得られない状況の下、各政党間の交渉や協議の結果、所得税控除をめぐる税制の変更や高校授業料や学校給食の無償化など大きな政策の決定が目まぐるしくなされる事態が生じている。

この状況を、私自身はボトムアップ型からトップダウン型へと政策決定のあり方が変わりつつあるのではないかと捉えている。

これまで、基本的に政権与党内の議論や省庁における行政面での検討が積み重ねられたうえで政策決定がなされるのが一般的なケースであった。

一方、この間、予算を成立させるために各政党間で交渉・協議がなされた結果、政策の方向性や大枠が先に決まり、制度設計や行政実務の観点からの検討など具体的な話はこれからというケースが多いように見受けられる。

必然、自治体にとって、影響が大きなことは予想されるものの、先行きを見通すことも具体的な検討を行うことすら難しい。ボトムアップ型の決定の際には行われていたであろう、自治体の現場の実情・実態、考え方や思いが決定に反映されるチャネルが入り込む余地は少ないものとなる。自治体の不安の種はこんなところにあるのではないだろうか。


だからこそ、市長会の役割は重要になる。

このような政治情勢の変化の中においても、政策の実施の多くを担うのは地方自治体だ。

地方の思いを国政に届けていくためにも、市長会の結束した行動が必要となる。そのために、汗をかいていきたい。そう決意している。


令和7年度京都府市長会春季定例会

令和7年度京都府市長会春季定例会のようす

4月11日 長い箸

仏教の寓話に「長い箸」がある。

地獄の食堂も極楽の食堂も混みあっている。机の上にはそれぞれたくさんのご馳走がところせましと並んでいる。さあ、食べようと思うものの、困ったことに手もとには、とてもとても長い箸しかない。もちろん、手で食べるのはNG。さてさて、どうするか?

地獄の食堂の風景を覗いてみよう。

みんながわれ先に食べようとするも、あまりに箸が長いので自分の口に食べ物を運べない。挙句の果てには、箸の先がとなりの人を突いてしまったり、互いに肘がぶつかり合って、あちこちで喧嘩が起こっている。

一方、極楽の食堂では。

みんなが美味しそうに食事を楽しんでいる。

そう。長い箸で料理をつまみ、向かい合うもの同士が、お互いに相手の口に食べ物を運んでいる。とても満足そうな笑顔あふれる風景がそこにはあった。


自分のことしか考えない人間が集まった社会では、奪い合いの結果、誰も利益を享受することができない。人は一人では生きていけないということをみんなでよく理解し、互いに協力し分かち合うことができる社会こそ多くの恩恵を受けることができる。そんなメッセージがこの寓話には込められている。


米国のトランプ大統領が、全世界を対象にした相互関税の導入を発表した。各国に一律10%の関税を課したうえで、国・地域ごとに異なる税率を上乗せするという。戦後、構築されてきた自由貿易体制の大きな転換点となることは間違いない。

各国が得意とする物品を生産し、必要とする国に供給する方が効率的で経済成長につながるとする経済学の「比較優位」の考え方はもちろん、保護主義による世界の分断が第二次世界大戦を引き起こしたことへの反省から、国際社会では自由貿易のルール作りが進められてきた。それはまさに、互いに協力し合うことで生まれた利益を分かち合うという思想に他ならない。

結果、世界経済は大きく成長したし、その果実を最大限に得てきたのは米国のはずなのだが…。

すでに、株価など世界経済は大きく動揺し始めている。

「自国」第一主義を唱える彼の御仁に先ほどの寓話は届かないものか。この道が「地獄」へつながる道でないことを願っている。

4月4日 考え続ける力

春は別れの季節であり、出会いの季節でもある。

今年は3月31日に22名の方が市職員として一つの区切りを付けられ、翌4月1日には24名の方々を市役所の新しい仲間としてお迎えした。

これまで市政の推進にご尽力いただいてきた皆さんのご労苦に心より感謝と敬意を表すとともに、引き継いだバトンをしっかり受け止め、新たな仲間とともに歩んでいきたいと思う。


今年度のスタートにあたり、新入職員をはじめすべての職員の皆さんにお伝えしたのは「考え続ける力」の大切さだ。

VUCAという言葉で表されるように私たちが生きる現代は、揺れ動きやすく、曖昧、不確実で複雑な先行きを見通しにくい時代だ。行政課題も複雑化・多様化しており、一つの決断をめぐり価値が対立することもあれば、新たな課題を生み出すこともある。絶対的な正解がある課題などほとんど無いと言ってよい。

一方、私たちはインターネットやSNSを通じて多くの情報へのアクセスが容易になったし、AIやアルゴリズムによって答えらしきものに極めて簡単にたどり着けるようになった。もちろん効率性という観点からは、こうした新たな技術が否定されるものでは決してない。

そこで求められるのが、簡単に答えに飛びつかないこと、下した決定や現状を批判的に検証すること、答えの出ない問題に対しても挑み続けることだ。答えや結論のない状態、不確実な状況を受け入れ、継続して向き合い続けることは、思いのほか苦しく、そう容易いことではない。だとしても、考え続け、考え抜いた先に、自分たちで答えや正解を導き出さねばならない。


この「考え続ける」プロセスこそが、私の言う「対話」に他ならない。

本年度もまた、そんな「対話」を通じて考え続ける一年にしていきたい。

令和7年度新入職員と

市役所令和7年度入所式のようす

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